第5章  実用新案ほか

 特許以外にも実用新案登録制度というものがあります。許法のように発明に高度性を求められず、簡易な発明(考案)を、無審査で登録して権利化する方法で、利化までの時間が短く、出願手数料も安く済みます。この他に、意匠権と商標権があり、出願により権利を取得することが出来ます。



実用新案制度


実用新案制度とは

 特許法のほかに実用新案制度というものがあります。
許制度は技術的に高度な発明を保護の対象としていますが、技術的に高度ではない小発明ともいうべき「考案」を保護するために設けられているのが実用新案制度です。


実用新案の保護対象

 実用新案法では、保護の対象を「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」に限定されています。  このため、「方法」や「材料」のように特許法では保護されるようなものは保護の対象になりません。
 実用新案登録出願の流れ実用新案の手続きは、無審査である点で特許制度と大きく異なります。出願時には出願手数料と同時に登録手数料を支払い、簡単な形式審査をパスすれば、実用新案権を取得することが出来ます。ただし、出願から6年で権利が消滅します。


実用新案制度と特許の違い





実用新案登録出願の流れ

出願

 実用新案登録の出願時には、出願書類を出願手数料および第1年分〜第3年分の登録料とともに特許庁に提出しなければなりません。出願手続を書面で行う場合には、磁気ディスクへの記録の求めも一緒に行う必要があります。



審査

 無審査制度といっても、全く審査がされないわけではなく、提出された書類が法に定められた様式に従って作成されているか否かの基礎的要件の審査が行われます。
 新規性、進歩性などの実体審査は行われません。
方式用件や基礎的要件に不備が発見された場合、通常の手続補正指令所で補正命令が通知されます。この補正命令に対する応答がないときや不適法な手続きである場合には、その手続きは却下となります。却下処分に不服がある場合には、特許庁長官に対して行政不服審査法による異議申し立てをすることができます。


補正

 方式要件に関する補正は、その出願手続きが却下とならない限り設定登録がなされるまで行うことができますが、明細書又は図面に関する補正は、出願から2月間及び補正命令で指定された期間のみ行うことができます。ただし、出願時の明細書又は図面に記載されていない事項を追加する補正を行った場合には、いったんは登録されたとしても、この補正が登録の無効事由となります。


登録

 方式要件および基礎的要件を満たしている実用新案登録出願は、出願から約4月ほどで設定の登録がなされます。なお、実用新案権の存続期間は6年とされ、登録実用新案公報は、登録後約10週間で発行されます。


実用新案技術評価書の請求

 実用新案技術評価書は、実用新案権の有効性を判断する材料として、特許庁の審査官が、出願された考案の新規性、進歩性などに関する評価を行い、これを請求人に通知するものです。


実用新案権の行使

 実用新案の権利を行使する場合には、実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければなりません。この提示やその他相当の注意をしないで警告や権利行使を行った後に、実用新案登録が無効となった場合には、警告や権利行使をしたことにより相手方に与えた損害を賠償する責めを負うことになります。





実用新案登録時出願の注意点

 実用新案登録出願には、「願書」「明細書」「図面」「要約書」の4つの書類が各1通必要です。つまり「図面」が必ず必要になる点で特許と異なります。また、実用新案の保護対象は「物品の形状、構造または組合せに係るもの」に限られてる点でも特許と異なります。後は基礎的要件審査でチェックされるポイントに注意する必要があります。


出願書類を書く前のチェックポイント

@保護対象であるか
 実用新案制度で保護されるのは、「物品の形状、構造又は組合せに係るもの」に限定されます。自然法則を利用していないものは実用新案法上の考案に該当しません。

A公序良俗に反していないか
 第三者の名誉を傷つけたり、善良の風俗あるいは公衆の衛生を害するおそれのある考案は、登録を受けることができません。


出願書類を書いた後のチェックポイント

B明細書の著しい記載不備はないか
 明細書又は図面に必要な事項が記載されていないか、又はその記載が著しく不明確ではないか、第三者が読んで理解できるように記載します。

C
請求項の記載様式に違反しないか

 実用新案法施行規則第4条で規定された実用新案登録請求の範囲の記載様式に沿っているか確かめましょう。

D単一性違反はないか

 2以上の考案についての1の願書で実用新案登録出願をするときは、単一性について
要件を満たす必要があるので注意しましょう。


願書の書き方

 実用新案登録出願の出願料が14000円で、さらに登録料として毎年7600円に1請求項につき
毎年700円を加えた額を3年分まとめて納付する必要があります。



明細書の書き方

 明細書の書き方も、特許出願の場合と基本的に同じです。各欄の項目見出しが【考案の名称】【実用新案登録請求の範囲】
【考案の詳細な説明】のように置き換える必要がありますが、それ以外の点については、特許出願の記載要領を参考にして記載してください。

【実用新案登録請求の範囲】
 この欄には、実用新案登録出願人が実用新案登録を受けようとする考案を特定するために必要な事項を記載します。
 実用新案の技術範囲はこの実用新案登録請求の範囲の記載によって定められるので、明確に記載する必要があります。

【考案の詳細な説明】
 この欄には、考案の内容を理解して再現できるように、明確かつ十分に記載する必要があります。


図面の書き方

 図面の書き方は、特許出願の場合と全く同じです。横150mm、縦245mmの最大幅を越えない範囲の見やすい大きさに製図するのが好ましいです。パソコン出願をする場合は「200dpi」または「400dpi」の解像度で図面を読み取り、「BMP形式」又は「GIF形式」でファイル保存します。


要約書の書き方

 要約書の書き方も、特許の場合と基本的に同じで、【要約】の欄については、自分のアイデアを「発明」と表現せずに、「考案」と表現して、全体で文字数400字以内になるように、簡潔に記載します。


実用新案技術評価請求の書き方
 技術評価請求の手数料は、1件につき42000円に1請求につき1300円を加えた額になります。実用新案は評価を求める請求項を選び、必要な請求項についてのみ手数料を支払えばよいことになっています。




意匠制度

 意匠は、物品の美的な外観を求めて創造されるデザインです。使い心地の良い優れた意匠は人々の購買意欲を刺激しますが、模倣するのも容易です。意匠制度は、新しく創作した意匠を登録して創作者の財産として保護するとともに、その利用も図ることを定めて、優れた意匠の創作を奨励し、産業の発達を促進しようというものです。


意匠法保護対象

 意匠法で保護される意匠は、美しさや独自性のある物品の形状・模様・色彩などに関する「デザイン」です。発明や考案が自然法則を利用した技術的思想であり、特許法・実用新案法がその面から保護しているのに対して、意匠法は美観の面から創作を把握し、これを保護しようという点で異なっています。


意匠登録を受けられる意匠

 意匠登録を受けられる意匠には、新しさや容易に創作できないことが求められます。ただし、工業上利用できるものが対象となるので、芸術品のように量産されないものは意匠登録されません。また、公序良俗に反するもの・他人の業務に係る物品と混同を生ずるものは意匠登録できません。なお、意匠登録の保護機関は登録の日から15年です。(出願から15年ではない)




意匠登録出願の流れ

 意匠法では、審査請求制度がないので、原則としてすべての出願が審査されます。そして拒絶理由のないものについては登録されて、公報によりその内容が公表されます。出願公開制度はないので、これが最初の公表です。ただし、秘密意匠の制度を利用した場合、登録の日から3年以内の指定期間内は、意匠の公表がされないことになっています。





商標制度

 特許法、実用新案法、意匠法の3法が、人間の創造的活動の成果である「創作」を保護することを目的とするのに対して、商標は、それ自体として創造性を必要とするものではなく、商標を使用するものの業務上の信用の維持を図ることを直接の目的としています。このように目的が大きく違うため、商標制度の仕組みは、ほかの3つの制度といろいろな点で異なっています。


商標制度の意義

 例えば、ヘッドホンカセットに「ウォークマン」のマーク(商標)がついていたので、安心して買ったところ、実はソニーと無関係の会社が勝ってに真似をしたニセのマークだったとしたら、そのマークを信用して買った人の利益が害されます。
 もしその商品品質が劣っていた場合、その会社のイメージを落としてしまいます。また、多くの時間とお金をかけて有名にした商標を他人によって安易にまねをされたら、その損失は多大であるといえます。
 そうしたことがないように、商標を保護する目的で定められたのが商標法です。


商標の存続期間

 商標法では、商標を使用する者の業務上の信用を図るものなので、存続期間を限る必要はありません。そこで、商標の存続期間を10年と定め、この間に使用されなくなった商標(不使用商標)を整理する(権利を失わせる)一方、信用が蓄積し、使用され続けている商標については、10年を経過した後も、何度でも更新申告を繰り返させることで、永久に権利を存続できるようにしています。


商標法の保護対象

 商標は、文字、図形、記号もしくは立体的形状によって構成されるもので、これらを独自で用いたり、組み合わせて用いたり、あるいは色彩と結びつけた標章(マーク)であって、業者がその商品または役務について使用する標章をいいます。




商標出願の流れ

 商標の場合、格別審査量を納めなくても審査官によって審査され、拒絶の理由のないものは登録査定され、10年分または5年分の登録料を納付することにより登録されます。出願公開制度はないので登録されると商標公報が発行されます。商標権の存続期間は、登録の日から10年を持って終了しますが、一度登録されれば使用している限り、更新登録の申請によって更新できます。





外国での特許

パリ条約ルート

 最初に日本に出願してから、12ヶ月以内なら、その間に他人が同一の発明について出願しても、新規性がないことを理由に拒絶されません。これをパリ条約上で「優先権」といいます。(日本で 出願した日から、外国に1年以内に出願すれば、日本と同じ出願日に出願したことになる制度で、1年を超えた場合は外国に出願した日が出願日になるということです)アメリカでは英語で出願しなければなりませんが、優先権が認められると12ヶ月の余裕がありますのでその間に翻訳をすることができるというメリットがあります。

PCTルート

 日本の特許庁には日本語で出願でき、例えばアメリカとドイツを指定すれば、両国に出願したのと同じ効果がえられます。翻訳文の出願は、原則として出願から20ヶ月までなので、パリ条約ルートよりも余裕があります。