第3章 出願書類の書き方
日本では、発明をしただけでは特許を受けることができません。特許を受けるためにはまず特許庁に出願する必要があります。ここでは特許を取得する上で注意点と、出願に必要な願書、明細書、図面要約書の4つの書類の書き方について学びます。
特許を取得するためには
特許を受けることができる者
特許を受ける権利は「発明者」にあります。この権利は、発明を完成させた人なら一部の外国人を除いて誰でも受けることができます。当然のことですが、他人の発明を盗んだ人には特許を受ける権利がありません。また発明者は個人でないといけません。発明者は特許を受ける権利を他人に譲り渡すことができます。発明者から権利を譲り受けたり相続した人のことを「継承人」といいます。個人として出願する場合は問題ありませんが、法人格のない団体の名義で出願することはできないので注意してください。出願をするためには、法律上の権利義務の主体となる資格が必要です。これを権利能力といい、「自然人」である「人」に認められている他、法律上「人」としての地位を認められた「法人」にも認められています
*高校生が出願する場合の注意事項
未成年者(満20歳に達しない者)や禁治産者(強度の精神病患者など)は、法定代理人に出願の手続をしてもらう必要があります。この場合の法定代理人には、普通は親権者であるご両親がなります。ただし、未成年者でも、結婚をした場合や、営業を許可された場合には自分で出願することができます。
*クラブやサークルで発明をした場合の注意事項
クラブやサークルは法人格のない団体なので、クラブやサークル名で出願できません。また何人かで協力して発明が完成し、特許を受ける権利が共有のものになっているときは、共有者全員で特許出願をしなければなりません。ですからクラブのみんなで発明した場合は、クラブ名ではなくて個人全員の名義で特許出願をする必要があります。また、未成年者については、各自の親全員に法定代理人をしてもらう必要があります。
*弁理士とは
特許の出願を自分でする時間がない場合は、弁理士または弁護士に手続行為の代理をしてもらうことができます。弁理士は特許出願などの手続を代行できる専門家で、この資格を取得するためには30倍とも言われる難関の国家資格に合格しなければなりません。特許出願の手続には色々難しい点もありますが、弁理士に依頼すればいろいろなアドバイスを受けることができ、特許を取得する上で非常に有利になります。なお、報酬をもらって行として特許出願の代理行為をできるのは、弁理士または弁護士の資格を持った人だけですから注意してください。
従業員の発明
| 職務発明とは 会社に勤める従業員が、会社の仕事として研究・開発をした結果完成した発明を「職務発明」といいます。この「職務発明」は、従業員自身の努力と才能によって生み出されたものではありますが、使用者である会社も給料、設備、研究費などを従業員に提供しているので、発明の完成に一定の貢献をしているといえます。そこで特許法では、発明者である従業員に特許を受ける権利があるとしながらも、使用者である会社の貢献度を考慮して、発明の実施や予約継承についての補償的権利を会社に与えています。このため、従業員がその権利を第三者に譲ってしまっても、会社は実施料を支払わずにその発明を実施できる権利(法定の通常実施権)が与えられます。また、会社が事前に従業員から特許を受ける権利を譲り受ける(予約継承)契約を定めることも許されます。 |
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特許出願の手続き
書面による出願
電子出願の受付開始以降においても、特許出願等を書面で提出できます。書面による出願は、特許庁の願課窓口に直接持参する方法と郵送する方法の2つがあります。書面による出願の場合には、財団法人工業所有権電子情報化センターに対して、電子化に要する手数料1件につき1500円+書面一枚につき700円を加えた額を別途納付しなければなりません。
パソコン出願
これまで電子出願をするためには専用端末機を使用する必要がありましたが、平成10年4月1日より、 市販のパソコンでも出願できるよう になりました。このための専用ソフトは特許庁から無償(送料は申請者負担)で交付されることになっています。なお、自宅のパソコンからオンライン出願を行うためには、ISDN回線やスキャナーが必要であったり、事前に「電子情報処理組織使用届」などを特許庁に提出しなければならないなど、初めて出願する場合には、準備に時間と費用がかかります。したがって、頻繁に特許出願をしない場合には、全国47都道府県の発明協会支部に設置されている共同利用パソコンを使用すると良いでしょう。
出願書類をそろえてみよう
特許出願に必要な書類
特許出願するときは、「願書」「明細書」「図面(化合物の合成方法のように図面を必要としない場合は不要)「要約書」の4つの書類が各1通必要です。
書面で出願する場合の用紙と文字の決まり
願書、明細書及び要約書の用紙は、日本工業規格A列4番(横21cm、縦29.7cm)の大きさとし、インキがにじまず、文字が透き通らないものを縦長にして用います。用紙には不要な文字、記号、枠線、けい線等を記載してはいけません書き方は、左横書で、1行は36字詰めとし、各行の間隔は少なくとも4mm以上をとり、1ページは29字以内とします。複数枚にわたる書類には、各ページの上の余白部分の右端にページ数を記入します。文字は、10ポイントから12ポイントまでの大きさで、ワープロ等により、黒色で明瞭かつ容易に消すことができないように書きます。「▲」、「▼」は用いることができません。また、「【 】」は、欄名の前後のみに使用できます。
| 書類のとじ方と提出方法 出願書類は、「願書」「明細書」「図面」「要約書」の順に重ねて、左側をホッチキスで止めます。そして、特許印紙を特定郵便局(集配局)、発明協会の本部又は一部の支部で購入し、願書左上に貼付します。割印は押しません。以上を封筒に入れて、下記の宛先に郵送又は特許庁に到達した年月日が出願日となるので、できるだけ書留で出しましょう(後日、出願証明書提出書に書留証明を添付して提出すれば、出願日が郵便局に差し出した年月日に訂正されます)。 〒100−8915 東京都千代田区霞が関3−4−3 特許庁長官 殿 (特許願在中) |
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願書の書き方
願書は出願書類の顔にあたるものです。決められた書式の通りに書けば問題なく書けると思いますが、間違えや書き損じがあると、最悪の場合出願が受理されなくなる場合もあるので気をつけて書きましょう。願書の余白は、少なくとも用紙の上に6cm、左右及び下に各々2cmとります。特許出願の手数料は一出願につき21,000円です。これを「特許印紙」で納付する場合は、願書の左上余白部分に特許印紙を貼り、その下に、その額を括弧で囲み記載します。
【書類名】
書類の名称は特許出願の願書なので「特許願」となります。
【整理番号】
出願人用の整理番号で、ローマ字(大文字)、アラビア数字と「―」の組み合わせからなる10字以内の記号を使用して自由につけることができます。出願番号が決定するまでの間の整理番号としても機能します。
【提出日】
特許庁の窓口に提出する年月日又は郵便局に差し出す年月日をなるべく記載します。年号は西暦ではなく元号で記載します。
【あて先】
「特許庁長官 殿」と記載します。
【国際特許部類】
出願する発明を最も適切に表示する国際特許部類のグループ記号(第2章参照)を記載しますが、適切な分類がわからない場合は省略できます。
【発明者】
発明をした自然人(個人)の【住所又は居所】及び【氏名】をもって表示します。法人や団体が発明者になることは認められません。発明者が複数いる場合は欄を繰り返し設けて発明者全員を記載します。【住所又は居所】は住民票などの通り、○県○市(○郡)○町(○村大字○字○)○丁目○番○号のように詳しく記載します。【氏名】は戸籍上の氏名(本名)を正確に記載します。読み方が難解であるときは【氏名】の欄の上に【フリガナ】をつけます。
【特許出願人】
権利者になる者の【識別番号】【住所又は居所】【氏名又は名称】及び【電話番号】をもって表示します。出願人には、発明者本人か、発明者から「特許を受ける権利」を譲り受けた個人又は法人がなれます。出願人は権利能力を有するものでなければならないので、法人格のない団体(○○同好会など)は出願人になれません。したがって個人事業者は、屋号(○○商店など)をもって出願せず、個人名義で出願してください。出願者が複数いる場合は欄を繰り返し設けて出願人全員を記載します。【識別番号】は、特許庁から識別番号の通知を受けている場合にのみ記載します。【電話番号】の数字は、アラビア数字で記載します。【住所又は居所】と【氏名又は名称】は、【発明者】の欄と同様に記載しますが、法人にあっては、名称を登記した商号のとおりに正確に記載し、【氏名又は名称】の欄の次に【代表者】の欄を設けて、その代表者の氏名を記載します。
印は、出願人の氏名の後ろに朱肉を用いて押します。法人にあっては、代表者の氏名の後ろに代表者の印を押します。ゴム印やネームスタンプは認められません。この他、印の代わりに識別番号通知を受けた人に交付される「識別ラベル」を利用できます。なお、未成年者の場合は手続能力がないので印は押せません。
【法定代理人】
手続能力のない未成年者が法律行為をする場合には法定代理人による手続が必要となります。ご両親にお願いしましょう。
【手数料の表示】
この欄は、特許印紙により手数料を納付する場合は記載不要です。予納制度を利用している場合に記載します。
【提出物件の目録】
この欄には、願書に添付して提出する書類の名称と部数を【物件名】の後に記載します。明細書が複数ページであっても部数は1となります。
明細書の書き方
明細書は出願書類の中核をなすもので、発明の具体的な内容について簡潔明瞭に記載します。審査の段階で拒絶されないよう発明を実施するために必要だと思われることをすべて書き出しておくのが無難です。また、全体として用語を統一して用い、不明確な表現は避けなければなりません。先行技術調査で調べた特許広報などを参考にすると書きやすいでしょう。明細書の余白は、上下左右に各々2cmとなります。
【書類名】
書類の名称は「明細書」になります。
【発明の名称】
「ロボット二足歩行装置」や「電気自動車の充電制御方法」のように発明の内容を簡潔、明瞭に表示する名称をつけます。発明の内容と直接関係のない字句を添えてはいけません。
【特許請求の範囲】
この欄には、特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要な事項を記入します。特許発明の技術的範囲はこの特許請求の範囲の記載によって定められますから、特許法第36条第5項及び第6項並びに特許法施行規則第24条の3の規定に従い、明確に記載する必要があります。特許請求の範囲は請求項に区分して記載し、特許を受けようとする発明が複数ある場合には、【請求項1】【請求項2】・・・のように請求項の語句の後に連続した番号を添えて欄を設けます。請求項が1つであっても【請求項1】と記載します。
【発明の詳細な説明】
この欄には、発明の内容を理解して再現できるように、特許法第36条第4項及び特許法施行規則第24条の2の規定に従い、明確かつ十分に記載する必要があります。原則として、段落の前に「【 】」を付した4桁のアラビア数字で【0001】【0002】のように連続した段落番号をつけます。そして、次のような見出しを段落番号の後につけて、発明の内容を簡潔に説明します。
【発明の属する技術分野】
特許を受けようとする発明の技術分野を明確にするため、「本発明は〜するための〜に関する。」のように簡潔に記載します。
【従来の技術】及び【発明が解決しようとする課題】
当該発明の属する技術分野に、従来どのような技術があったのか、好ましくは文献名とともに記載し、従来技術の問題点を明らかにします。そして、特許を受けようとする発明が、従来技術の問題点などに対してどのような点を解決すべき課題としているのかを記載します。
【課題を解決するための手段】
請求項に記載された発明がこの解決手段そのものとなりますから、まず特許請求の範囲に記載された構成を記載します。さらに、特許請求の範囲に記載された構成の中で、より好ましい構成を記載し、発明をより具体的に記載しておきます。このように記載しておくと拒絶理由の回避がやりやすくなる場合があります。
【実施例】
通常の技術的知識を有する第三者が、当該発明を実施できるように、特許出願人が最良と思う発明の形態を【実施例】として具体的に記載します。
【発明の効果】
特許を受けようとする発明が、従来の技術に比べて優れているといえる点を、発明の有利な効果として記載します。発明の進歩性を判断する材料にもなりますから重要です。
【図面の簡単な説明】
図面を添付している場合には、この欄を設けて、図の説明ごとに行を改めて「【図1】平面図」のように記載し、【符号の説明】の見出しを付して図の主要な部分を表す符号の説明を記載します。
出願書類の作成
出願等申請書類は市販のワープロ(ソフト)等で作成し、3.5インチFDの保存します。パソコンによるオンライン手続をするためにはHTML形式に変換する必要がありますが、MS−DOSのテキスト形式で保存すれば、協会支部でHTML形式に変換できます。 図や表についても、BMP形式かGIF形式に変換する必要がありますが、紙のまま持参すれば協会支部のスキャナーで読み取ることができます。ただし、「図面」という書類自体は、明細書などと同様にワープロ(ソフト)等で作成します。
化学式などを明細書中に記載する場合には、明細書中の記載すべき位置に、化学式なら【化1】【化2】、数式なら【数1】【数2】、表なら【表1】【表2】、日本工業規格X0208号に定められている文字以外の文字の場合は、【外1】【外2】のように記載する順序で連続番号を付けて、これら化学式などを記載します。パソコン出願の場合は、「BMP形式」か「GIF形式」の画像ファイルにして、これを「HTML形式」のファイルにまとめますが、発明協会支部の共同利用端末を利用する場合は備え付けのスキャナーを無料で使用できるので、図表は紙のまま持ち込むといいでしょう。
図面の書き方
図面の用紙は、日本工業規格A列4番(横21cm、縦29.7cm)の大きさのトレーシングペーパー、トレーシングクロス 又は白色上質紙を用います。ただし、黄色や赤色のものは使用できません。特に必要がある場合は横長に記載できますが、原則的には縦長に用います。
図は、横150mm、縦245mmの範囲内に記載してください。また、1つの番号を付けた図を複数ページにわたって描いてはいけません。なお、1つの番号をつけた図が1ページに描けないときは、【図1】【図2】のように連続番号を付けた上で、複数ページに分けて描くことができます。
書き方は原則として製図法に従って描きます。線の太さは、実線は約0.4mm(引出線は約0.2mm)、点線及び鎖線は約0.2mmで、濃厚な黒色インキなどを用いて黒色で鮮明に描きます。鉛筆その他消えやすいものを用いたり、着色したりしてはいけません。
<断面図>
断面図などの切断図には、平行斜線を引き、その断面中異なる部分を表す切断面には、方向を異にする平行斜線又は間隔の異なる平行斜線を引きます。
<切断面>
図中のある箇所の切断面を他の図に描くときは、一点鎖線で切断面の箇所を示し、その一点鎖線の両端にA−A、B−Bのように符号を付け、かつ一点鎖線の矢印で切断面を描く方向を示します。
<引出線と符号>
明細書の【発明の詳細な説明】の項目で説明する図中の各部分については、他の線と明確に区別することができる引出線を引いて、約5mm平方の大きさのアラビア数字で符号を付けます。
要約書の書き方
要約書の余白は、上下左右に各々2cmとります。文書は口語体とし、技術的に正確かつ簡明に発明の全体を記載します。用語は明細書及び要約書全体を通じて統一して使用します。
【要約】
発明の概要を文字数400字以内で簡潔に記載します。具体的には【課題】【解決手段】等の見出しをつけて、発明が解決しようとする課題とその解決手段を記載します。
【選択図】
発明の概要を把握するのに最も適当な図の番号を「【 】」を使用せずに「図1」のように記載します。図そのものを記載しません。
パソコン出願をする場合の事前手続
パソコン出願をする場合には、予め出願人の住所、氏名、印鑑等の情報を特許庁に登録しておく必要があります。この事前手続は通信費程度の費用負担でできますから、いざというときに備えて識別番号等を取得しておくと良いでしょう。
識別番号付与請求書
あなたの住所、名前、印鑑等の情報を特許庁に登録するための書類です。これを提出するとやく1週間後にあなた専用の識別番号(コード)が送られてきます。以後の手続では、このコードを記載します。
電子出願プログラムCD−ROM交付請求書
パソコン出願ソフトは請求によりCD−ROMで交付されます。ただし、送料は着払いで各自の負担になり、パソコン出願ソフト受領後、「電子出願プログラムCD−ROM受領書」を特許庁へ返送する必要があります。
電子情報処理組織使用届
あなたがパソコンを電子出願端末として使用する旨を特許庁へ届け出するための書類です。なお、共同利用パソコンを使う場合でも提出する必要があります。
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